STATEMENT

私は無限に広がる書の世界を旅している。

巨大筆は、文字通り、大きくて重い。
所有する筆の一つを例に挙げると、その長さは5メートル、重さは60キロだ。
実際に書く場合は墨も加わり、それは非常に扱いにくい。
机上で書くのとは比にならない、いくつもの制限が出てくる。
「なぜ、巨大筆で文字を書くのか?」
それは、巨大筆でしかできない表現があるからだ。
全景を捕らえることができない巨大なキャンバスに書くことは、
目を閉じて書くのとも似ている。
墨をつけ迷いなく全身全霊で一気に書き上げる。
小手先の技術は通用しない。
そこには、より『純粋な心の有り様』が映し出される。

日本の書道は、文字を美しく書くという伝統文化のひとつである。
造形芸術の一種で、墨の濃淡や筆遣いにより、書き手の精神や観念が表現され、
今日では書く技術だけでなく自己鍛錬としても学ばれている。

私は4歳のころ、親に近所の書道教室に連れて行かれた。
この時、文字は物事を伝えるだけでなく、美しいものであることを学んだ。
師匠の書をまねることから、文字の造形や筆遣い、呼吸を身につけた。
また、時代を生き抜いてきた先人の書からは強さや尊さ、
その時代の思想を知り得ることができた。
私は書を書き学ぶことで、
遠き時代の書き手とも心を通わせているように感じる。

子供に書く道具を持たせると、最初は振り回したり感触を確かめたりして遊ぶ。
そのうち指に線が書けたり机にも書けたりすると、
面白がってどんどん書いていく。
私が書道をしている理由も
子供のころのワクワクが未だに止まらないからだ。
職人の手によって生み出される筆、墨、硯、紙などの書道具は、
それぞれの種類の組み合わせ方で表現の幅が無限に広がる。
これからまだまだ出会うであろう表現の数々に心踊る毎日である。
その好奇心や喜びに国境はないと思う。
書を通して、世界中の人の心と心がつながると信じている。